どんな指標が使われる? 配当方針の種類6選

企業が株主に対して利益を還元する方法として、株主優待や自社株買い、配当金の支払いが存在します。その中でも配当金の支払いは主たる株主還元の方法です。

企業は配当金の金額を決めるにあたって、株主還元方針や配当方針といったものを定めています。今回は企業の配当方針についてどのようなものがあるのか、安定配当の確率が高い順に紹介していきます。



目次

[超安定]累進配当


 累進配当とは、前年の配当金から減配をせず、配当金額の維持か増配のどちらかしかしないという配当方針のことです。明確に「累進配当」と記載していない場合でも、「減配をしない」「〇年まで毎年x円ずつの増配を行う」という書き方で累進配当を表している場合もあります。

 累進配当を明言する企業は、今後配当を行うに十分な事業利益を得られることを予想できている企業が多いので、企業としても安定している場合が多いです。


[安定]配当下限 x円

 事業利益に関係なく配当金を最低x円支払うことを約束する配当方針です。例えば「80円以上の配当を目指す」「150円を配当の下限とする」といった書き方がされます。

 ここで示している配当金額はあくまで「最低幾ら支払います」という意思表示なので、それ以上の配当金になる場合もあります。但し、例えば配当下限80円とした場合で1年目に90円配当、2年目に減配して80円配当をした場合でも配当方針には反していないので、累進配当よりは安定性は劣ります。


[準安定]DOE x%以上・目安

DOEとは「株主資本配分率(Dividend On Equity Ratio)」のことで、例えば「DOE3.5%以上の配当を行う」のように表記されます。

計算式は「DOE = 配当金額 ÷ 純資産額」です。組み替えると「配当金 = DOE × 純資産額」となります。

 

株主資本とは簡単に言えば貸借対照表(BS)の純資産のことで、会社を立ち上げる際の元手となった資金に、今まで稼いだ利益の積み立て分が含まれます。

純資産の数値は基本的に企業が利益を出すと大きくなり、逆に損失を出すと小さくなります。企業が赤字を出さない限りは純資産の数値は基本的に減る方向で動くことは少ないので、純資産に基づく配当方針であるDOEは安定配当を行う証となるわけです。

「DOE〇%以上」を配当方針としている企業は、利益が上がれば(赤字にならなければ)DOEの分母である純資産が大きくなりDOEの数値が下がるので配当金額が上がります。但し赤字になった場合は純資産の額が小さくなるため、配当金額が下がる可能性があります。


[中安定]配当性向 x%以上・目安

 「当期の利益の〇%を配当金として支払いますよ」という意思表示です。1事業年度という短期の利益が配当の源泉であるため、大きく稼いだ年は配当金が高くなり、逆に利益が少ない年は配当金が低くなるという不安定さがあります。

 但し、企業によっては当期利益の大小に関わらず、配当性向を無視して減配をしないところも存在します。特に「安定的な配当を目指す」という文言が入っている場合、その傾向が強いように思えます。しかしながら「安定的な配当」をあくまで「目指している」だけなので、減配をしないとは言っていません。よって減配の可能性は存在します。

 ところで、配当性向は他の配当方針と組み合わせて使う場合もあります。例えば「配当性向40%以上かつDOE3.5%以上」や「配当性向30%と配当金60円のどちらか高い方」といった場合です。この場合は配当下限やDOEが定められているため、安定した配当が期待できます。


[不安定]総還元性向 x%以上・目安

 総還元性向とは、「当期の利益の〇%を配当金及び自社株買いに使いますよ」という意思表示です。配当性向との違いは、配当金額の目安を示していないことです。

例えば総還元性向50%として、自社株買いに利益の20%を、配当金に利益の30%を使用するということができるわけです。

よって利益を出した場合でも、年度によって配当金を削って自社株買いを行う可能性があるため、減配となる可能性が常に存在します。

総還元性向は名称が配当性向と似ているので注意が必要です。


[安定なにそれおいしいの?]配当方針が明記されていない

配当方針が明記されていないのだから、配当金の制限なんてありません、出す出さないも含めて企業の自由です。「配当金の支払いを重要な経営課題と位置付けている」というだけでも、具体的な数字がなければ何も言っていないに等しいです。


まとめ

今回は主な配当方針について見てきました。皆が知っているような大企業の場合は配当方針を明確に定めている場合が多いかと思います。但し配当方針というのは永続的なものではなく、中期計画の策定の際などに変更となるものです。今まで累進配当を行っていたから今回も大丈夫だろうと考えるのではなく、数年に一度は配当方針を見直す必要があります。

また今回の配当方針で「安定」としなかったものの中にも、連続で10年以上減配をしていない安定配当企業が存在します。このような企業は明確な配当方針を定めないことで減配の可能性を残しているものと思われます。しかし長年減配をしていないということは、今後も利益が安定している限りは減配なしで安定配当が続く可能性が高いとも考えられますので投資を検討する価値はあります。どのような企業が長年減配をしていない安定配当銘柄かは、当ブログの「個別株-連続増配株」や「個別株-高配当株」で探していただければと思います。








  • URLをコピーしました!
目次