当ブログでは他の記事にて安定高配当株をご紹介していますが、あまり馴染みのない企業が多いかと思います。
「そんな聞いたこともないような銘柄に投資したくない!」
「マイナーな株に投資して本当に安全なの?」
そのように思われる方、ごもっともなことだと思います。
当ブログで安定高配当株としてご紹介した銘柄は、いずれも10年以上減配がない等の理由があってピックアップした株です。

しかし知名度がないとどうしても安心できないのも事実。
そこで今回は、知名度があって安定高配当が狙える大手企業銘柄と、知名度はある大手企業だけれども安定高配当株というには疑問符が付く銘柄をそれぞれ5つずつ紹介したいと思います。
大手安定高配当銘柄 5選
[2914]日本たばこ産業(JT)
株価 :3,902円
配当金:194円
利回り:4.97%
日本たばこ産業(JT)は日本におけるたばこの専売を行っている企業です。
時価総額は四季報の食料品部門で1位。
メインのたばこにしても、世界5位のシェアを誇っています。
たばこは国内では厳しい印象があると思われる方が多くいると思われます。
しかしJTでは紙巻きたばこの他に「ploomX」ブランドの加熱式タバコの普及に努めています。
また世界的にはたばこの需要はまだまだ根強いため、今後も安定した利益とそれに伴う配当を出してくれるものと思われます。
余談ですが、JTの株を持っていると喫煙者に寛容になれるという話があります。
喫煙してくれるとJTが儲かるかもしれないので……。



[4042]東ソー
株価 :2,032円
配当金:100円
利回り:4.92%
東ソーは大手総合化学メーカーの1社で、苛性ソーダや塩化ビニルに強みを持ちます。
特に塩化ビニルに関してはアジアにおける生産量3位、臭素や苛性ソーダでは国内1位、その他素材でも国内唯一の生産者というものが多々あります。
このように取扱製品に多数高シェアのものがあるため、事業の安定が一定数担保されているとみて良いでしょう。
実際10年以上赤字がありません。
また同社の自己資本比率は60%を超えており、安定感もあります。
10年以上減配がないことも含め、今後も安定した配当が見込める企業と判断できます。



[4503]アステラス製薬
株価 :1,504円
配当金:74円
利回り:4.92%
アステラス製薬は国内2位級の売上を誇る大手製薬会社です。
連続増配12年の銘柄で、今後も増配が期待できる銘柄と思われます。
懸念点としては主力製品である前立腺がん治療薬の「イクスタンジ」の特許切れが近いことと、それに続く主力製品の名が挙がってこないことが挙げられます。
しかし同社は事業買収などで事業拡大を図ったり、次の製品の開発も当然行っていることや企業規模が大きく対応策が豊富にとれることからいずれは回復するものと思われます。
またEPS(一株当たり純利益)の数値が低いことが気になりますが、これは特許や事業買収に関わるのれんの償却額が大きいことで会計上の利益が圧迫されていることが原因です。
武田薬品工業にも言えることですが、製薬会社はこのような事情があるため最終利益が低く出ることがあります。
実際はアステラス製薬の場合「コア営業利益」として償却費を除いた実際の実力を公表しており、そこで公表している利益の範囲内で現在配当が継続できているため、会計上の見た目ほど利益に乏しい状況ではありません。
大手製薬会社かつ連続増配株が5%近くの利回りで手に入る現在は、見方によってはチャンスとも言えるでしょう。



[8584]ジャックス
株価 :3,730円
配当金:180円
利回り:4.83%
ジャックスは三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱UFJ銀行の持ち株会社)に属する大手信販会社です。
信販会社では最大手のオリエントコーポレーションに次いで2位級の規模を誇ります。
中でもショッピングクレジットの取扱高国内1位や、オートローンの分野でも取扱高1位を誇っております。
また堅実経営の方針で不良債権も少ないです。
配当はここ10年、毎年利益の範囲内で行っており安定しています。
利益も十分な黒字を出しております。
大手金融グループであることの安定感や配当実績から、高配当安定株として申し分ない企業だと判断します。



[2768]双日
株価 :3,110円
配当金:150円
利回り:4.82%
双日は大手総合商社に数えられる企業です。
ただし大手総合商社の中では規模が比較的小さく7位級です。
いわゆる5大総合商社の株が欲しい場合は利回りが4%近くまで下がりますが、「三菱商事」「住友商事」「丸紅」あたりを見てみると良いかと思います。
さて双日ですが、戦前に栄華を誇った鈴木商店を母体に持つ、非常に歴史のある企業です。
東南アジアに強みを持っている企業であり、総合商社の中では唯一炭鉱を操業する等、他社と差別化ができています。
配当に関しても総合商社らしく累進配当を掲げており、減配リスクは限りなく低いです。
規模こそ他社に劣りますが、十分大手企業としての安定性や歴史、実績を持つ企業のため、安心して保有できる銘柄だと思います。



大手「非」安定高配当銘柄 5選
[9104]商船三井
株価 :5,119円
配当金:300円
利回り:5.86%
商船三井は海運2位の三井系大手海運業会社です。
海運業はコロナ禍の時にコンテナ船の運賃が爆騰したことにより、非常に高い利益を上げることができました。
これは商船三井だけでなく、海運1位の「日本郵船」や同3位の「川崎汽船」も同じです。
その際、配当利回りは10%近くと非常に高い水準まで上がりました。
しかしもともと海運業は市況の変化が激しく、コロナ前は赤字を出すことも多くあった業界です。
2025年3月期は300円の配当を見込んでいますが、商船三井の配当は過去安定していません。
配当方針では150円の配当を下限としているため、それ以下の配当金になることは考えにくいですが、その場合の利回りは3%を切ります。
同社はコロナ禍で稼いだ利益を不動産など市況に影響されにくい分野へ投資することで事業の安定性を高める旨を公表しているため、将来的に安定配当が実現するかもしれません。
しかし現時点では海運業らしく、利益および配当金額が安定しない状況が続くものと思われます。



[5411]JFEホールディングス
株価 :1,708円
配当金:100円
利回り:5.85%
JFEホールディングスは鉄鋼メーカーの「JFEスチール」や「JFE条鋼」、その他事業の「JFEエンジニアリング」などを擁する持ち株会社です。
主力は鉄鋼業で、国内では最大手の「日本製鉄」に次ぐ2位のポジションにあります。
またJFE条鋼は電気炉メーカーでは1位の規模を誇ります。
そんなJFEホールディングスですが、配当は安定しているとは言えません。
配当方針は配当性向30%としており、利益に連動する形を取っています。
企業の中には配当性向を無視して減配を行わないところもありますが、同社はがっちり利益と配当金を連動させています。
そのため配当金額の上下が非常に激しく、ある年は140円の高配当かと思えば別の年は赤字で10円しか配当が出なかった、ということもあります。
この傾向は「日本製鉄」にも当てはまりますが、「日本製鉄」の場合は事業利益を市況に左右されないように変革を行っている分、JFEホールディングスよりも今後の配当金安定の可能性が高いです。
利回りは鉄鋼業の中でも随一のJFEホールディングスですが、安定配当の面では落第点と言わざるを得ません。



[7261]マツダ
株価 :1,019円
配当金:55円
利回り:5.40%
マツダは国内6位の自動車メーカーで、トヨタ自動車が5%出資を行っている企業でもあります。
旧社名は「東洋工業」で、プロ野球球団「広島東洋カープ」の「東洋」はここから取ってきています。
同球団の本拠地にも「MAZDA ZOOM ZOOM スタジアム」と、マツダの名前が掲げられています。
そんなマツダですが、「日産自動車」に次ぐ配当利回りを誇るものの、配当は安定していません。
配当方針では「安定的な配当の実現」を掲げており、実際に2020年3月期に利益が大幅に下がった際も減配を行わずにいました。
しかし翌年2021年3月期は赤字に転落しており、その際は無配となってしまいました。
2024年3月期は60円の配当を出していますが、2025年3月期の配当見込みは利益の減少に合わせて55円と、5円の減配としております。
有名企業ではありますが、配当が安定しているかというと疑問符が付く銘柄です。



[5938]LIXIL
株価 :1,708円
配当金:100円
利回り:5.85%
LIXILは国内最大手かつ世界有数の住宅設備機器メーカーです。
2011年に「トステム」ほか4社が合併して発足しました。
同社は20年以上減配をしていない企業で、現在もそれは続いています。
そんな優良企業に見えるLIXILですが、問題となるのは利益の方です。
同社は毎年の利益が安定せず、十分な利益が出ていない年や赤字の年でも減配を行っていません。
つまりタコ足配当のようになっています。
利益に関しては上で挙げたアステラス製薬のように合併等ののれん償却が足を引っ張っている可能性があります。
しかし営業活動によるキャッシュフロー(企業活動によって入ってくるお金)も毎年安定しておりません。
また自己資本比率も30%台と高いとは言いにくいのが現状です。
企業体力が続く限りは減配なしが継続されると思いますが、安定した利益を出すための施策が欲しい企業です。



[6305]日立建機
株価 :3,458円
配当金:175円
利回り:5.06%
日立建機は文字通り日立製作所系の建設機械メーカーです。
ただ日立製作所の子会社ではなく関連会社であり、かつ筆頭株主は日立製作所ではありません。
同社の規模としては建設機械業界で不動の首位である「コマツ」に次いで国内2位となっています。
そんな日立建機ですが、配当方針として配当性向は30~40%としています。
そしてそれをほぼほぼ守っており、本当に利益の30~40%しか配当金に回しません。
東ソーみたいに配当性向を定めつつ、減配しないように場合によっては調整するといったことをしないのです。
その利益も安定しないため、2025年3月期は175円の配当金を見込んでいますが、年度によっては配当金12円のようなこともあります。
大手企業かつ「日立」という知名度もありますが、安定配当銘柄とは言いにくい企業です。



総括
今回ご紹介した銘柄は、全てとは言わなくても多くの企業名を聞いたことくらいはあるのでしょうか。
選んだのはいずれも大手企業に該当する銘柄です。
そのため利回りが以前ご紹介したものより若干低くなっているものもあります。
(4%後半を「低い」というのもどうかと思いますが……)
勘違いしていただきたくないのは、今回ご紹介した「非安定配当株」についてです。
これらの銘柄は過去の実績を見た結果、安定性に欠けると当ブログで判断したもので、今後の配当ないし業績が必ずしも不安定になるというわけではありません。
大手で有名企業というだけあって、どの企業も優れた人材と豊富な経営資源を持っているものと思われます。
銘柄選定にしても2025年1月中旬時点の株価や配当をベースとしているため、今後キャピタルゲイン(売却益)を狙うには優れた銘柄である可能性もあるわけです。
今回は過去の実績に基づいた当ブログの判断にて、非安定配当株としてピックアップさせていただいただけで、決して企業価値を損なうものでないことをご理解ください。
ただ今回の記事にて、大手企業だから、有名企業だから必ずしも配当や業績が安定しているわけではないことはご理解いただけたかと思います。
もしもあなたが毎年の安定した配当金を得ることを目的に銘柄を選ぶならば、大手だから、知っている企業だからといった理由ではなく、本当にこの企業は安定した配当を出し続けてくれるのかをシビアな目で判断していただきたいと思います。
株式購入の際の証券口座に関しては下記記事をご参照ください。


