〇3行で銘柄解説
・半導体製造に使用する超純水を扱うメーカー
・連続増配年数は9年で、10年連続も視野に入る
・利益に合わせた配当のため、安定して配当が続くかは半導体の市況次第
〇会社概要と配当基準日
野村マイクロ・サイエンスは半導体製造などに使用する超純水装置を取り扱っている大手メーカーです。
超純水とは通常の水から極限まで不純物を取り除いた液体のことで、半導体製造過程の洗浄で多く使用されます。
同社はその分野において国内と韓国でトップシェアを誇り、世界でも5本の指に入ります。
また韓国サムスンとの取引が多いことが特徴です。
設立は1969年で、実は野村證券などを擁する野村グループの一社だった北興化学工業(現在も野村マイクロ・サイエンスの筆頭株主)から分離した会社でした。
元は米国ゼネラルエレクトリック社が開発した技術を販売する会社でしたが、1974年に米国アクアメディア社の超純水技術を導入し、現在の超純水製造装置事業に参入しました。
上場自体は2007年に行っていましたが、東証一部上場は2021年と割と最近です。
配当は9年連続増配中で、2025年3月期も増配予定なので10年連続増配になる予定です。
ただ増配額は直近2年で跳ね上がった感があります。
それは配当方針が利益に比例するものであることが要因で、直近の半導体市況好調が理由で利益が上がり、それに連れて配当金額も増えたものと思われます。
今後の配当も業績次第の側面があるかと思われます。
配当基準日:3月末
〇配当方針
配当性向30%を目標としています。
ちなみに過去10年、配当性向30%の数値をクリアしたことはありません。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:729億円
自己資本比率:30.8%
時価総額は1,000億円にも満たない中型株です。
自己資本比率は他社と比較しても低めです。
これは設備投資のために借入金を増やしたことが原因と思われます。
2023年3月期には自己資本比率が50%程度と、他社と比べても遜色ない水準でした。
〇過去10年間の配当とEPS(一株当たり純利益)含む平均等基本情報



EPS(一株当たり純利益)の数値が年々大きくなっていることが分かります。
それに連られる形で配当額も上がっております。
株価は2024年の年末に大幅に上昇したため、通常時よりも高めになっております。
〇比較込20年シミュレーション
投資額を1百万円として、平均増配額から予想した今後20年の配当金累計を、利回り6%と5%の場合と比較した結果が下の表となります。



現在の株価がちょっと高くなっていますが、それでも20年単位で見た時に5.5%安定配当株以上のパフォーマンスは得られる想定です。
〇6%配当と同額を達成する株価シミュレーション



株価2,250円で6%配当株の水準に大体並びます。
今後の株価次第ですが、この記事を作成している時点では十分に狙える水準です。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
2024年春に半導体株全体が上がった影響を受けるように、野村マイクロ・サイエンスの株価も大きく上昇しています。
2023年から同社の株を保有していた場合は株価が実に6倍にまで跳ね上がったことになります。
しかしロマンは一瞬で、その後はご覧の通り一気に株価が下がっております。
これは不祥事などが原因ではなく、他の半導体銘柄も同様に下がっていることから、単に一時的ブームが過ぎたことが原因と思われます。
〇総括
野村マイクロ・サイエンスは超純水の大手メーカーで、国内や韓国、特にサムスンとの取引に強みがあります。
海外売上比率は約80%で、2023年3月期までは韓国、日本、中国の順番で売上が大きかったのですが、2024年3月期には米国の売上が前年の約6倍に跳ね上がり、売上相手国で1位になっています。
この傾向は2025年も続く見込みで、米国、日本、中国の売上高順位になる見込みです。
強みであった韓国との取引は年々減少しておりますが、他国でそれ以上に売上を上げているため野村マイクロ・サイエンス全体の売上は増えています。
同社は9年連続増配中で、現在10年連続を目指している状況です。
連続増配年数は少々短く感じますが、会社側は連続増配になっていることを認識しています。
ただし同社は旺盛な半導体需要に合わせて設備投資を充実させており、自己資本比率はそれほど高くありません。
半導体業界が潤っている状況ならば連続増配が期待できるかもしれませんが、そうでなければ増配の可能性に疑問符が付きます。
増配するかどうかは利益によるところが多いと思われる企業です。
むしろ設備投資が充実しており、時価総額も低いことを考えると、半導体市況次第では大きく成長する可能性のある企業ともいえます。
長期保有も結構ですが、キャピタルゲイン狙いで保有するのも面白い銘柄と言えそうです。


