〇3行で銘柄解説
・三井グループ御三家に数えられる、資源に強い大手総合商社
・累進配当導入かつバフェット効果で減配の可能性は低い
・株高により利回りが低く、高配当株と言える銘柄ではない
〇会社概要と配当基準日
三井物産は5大総合商社の一角で、三菱商事・伊藤忠商事と首位争いをする、三井財閥御三家(三井物産・三井住友銀行・三井不動産)の一つです。総合商社の中では鉄鉱石やLNGなど資源分野に絶大なる強みを持ち、「資源一本足打法」と揶揄されることもありますが、2022年度は三菱商事と共に、2023年度は総合商社で唯一純利益1兆円越えを果たしました。昨今では資源集中の事業構造を見直しつつあり、国内の給食事業やアジアの医療事業など、非資源分野の強化も図っています。
設立は1876年、実質的な創業者は益田孝とされています。設立当初は三井財閥から大した支援を得られない弱い立場でしたが、徐々に頭角を現し三井財閥の中でも有数の企業に成長します。明治時代の日本企業の海外進出は、「三井物産が進出し、日本郵船が航路を開き、横浜正金銀行(後東京銀行、現三菱UFJ銀行)が出店する」といわれるほどの影響力を誇っていました。また三井物産は事業会社を三井財閥の構成会社としており、現在の「東レ」や「日本製粉」「三機工業」「商船三井」などは三井物産から分離した企業でした。現在も単に「商事」と言えば三菱商事、「物産」と言えば三井物産を表すと言われるほどの力を誇る企業です。
三井財閥は「人の三井」と言われるように有能な人材を抜擢する風潮があり、三井物産も同じく抜擢人事を行う傾向があります。また伊藤忠商事ほどではありませんが、比較的体育会系の社風とされています。
配当はこの12年間で一度だけ減配していますが、無配の年はありません。昨今の好調な業績に加え、他の総合商社と同じく累進配当を敷いているため減配の心配は少ないでしょう。
但し、大手5大総合商社は米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が投資をしたことにより日米で投資家の注目を集め、株価が現在非常に高くなっております。そのため利回りは大体3%前後と高くはありません。
増配を狙えない企業ではありませんが、現状では株価が高すぎるため、高配当株・増配株としての魅力には乏しいというのが感想です。
配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:3,091円
配当額:100円
利回り:3.23%
利回りは3%程度です。年度によっては4~5%くらいの利回りが期待できましたが、しばらくは良くても3%中盤の利回りがせいぜいといった予測です。
〇配当方針
累進配当かつ営業キャッシュフローの40%を目安に配当を行うことを中期計画で明言しています。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



赤字の年もありましたが、基本的に毎年安定して利益を上げています。また配当金も無理のない範囲で出しております。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:11兆1,952億円
自己資本比率:44.6%
時価総額は10兆越えで、伊藤忠商事と総合商社部門時価総額2位を争っています。自己資本比率は特に問題ないでしょう。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
最近少し下がりましたが、それでも2021年から急上昇しています。好調な業績、手厚い株主還元、投資の神様の購入という要因が背後にあるものと思われます。この上昇の流れがいつまで続くか分かりませんが、商社の中では資源比率が高いので、資源価格に株価が多少影響される可能性があると思われます。
〇総括
三井物産は明治時代から存在する総合商社で、旧三井財閥、現三井グループを代表する企業かつ、5大総合商社の上位に位置する名門企業です。戦後GHQの財閥解体により会社分割がされ三井物産の名が無くなりましたが、その後合同を果たし現在に至ります。商社の中では一番利益における資源比率が高く、2023年度の業績は総合商社No,1の総合力を誇る王者、三菱商事を抜いて純利益1兆円を達成し総合商社Topの座に上りつめました。
配当に関してはおおむね安定しており、過去に減配はあれど現在は累進配当を掲げていることもあって安定配当が望めます。利益も安定しており自己資本比率も悪くないため、減配の心配はしなくてよさそうです。
但し他の5大総合商社にも言えることですが、現在株価が非常に高いため、利回りが低くなっています。そのため高配当株とは言えないのが現状です。配当は安定しているので保有していてもある程度の配当金は運んできてくれると思われますが、現状では商社株の上昇を見込んでのキャピタルゲイン(株式売却益)狙いの方が適していると思われる銘柄です。


