〇3行で銘柄解説
・国内3位、非資源分野に強い総合商社
・業績安定、累進配当、比較的増配多しの安定配当企業
・バフェット効果などで株高のため利回りが低く今の長期保有には不適
〇会社概要と配当基準日
伊藤忠商事は5大総合商社の一角で、三菱商事・三井物産に次ぐ売上規模を誇る企業です。祖業が繊維専門商社であったことから、三菱商事・三井物産と比較して資源分野の売上比率が低いですが、その分非資源分野で強みを持っており、消費者直結の企業を傘下に多く保有しています。コンビニのファミリーマートやスポーツウェアのデサントはその代表例です。また中国での取引にも強く、中国最大の国有複合企業であるCITICにも出資しています。
2015年度には総合商社5社でトップの最終利益と時価総額を記録しました。その原動力となったのは当時社長、現在CEO兼会長の岡藤正広氏の経営手腕が大きいとされています。社風は5大商社の中では一番体育会系のノリが強いとされていますが、その反面岡藤氏の社内改革の影響もあり、朝方勤務や原則20時以降の残業禁止、飲み会の二次会禁止など、画期的な取り組みでも知られています。
配当は10年以上減配がなく安定しています。利益も毎年安定して計上しています。これは良くも悪くも資源に依存していない事業構造によるものと思われ、資源価格に業績が左右されにくいからだと思われます。累進配当を掲げているのは他の総合商社も同じですが、2024年度の計画では総還元性向50%かつ増配、自己株式取得など、株主還元にも積極的に取り組む姿勢を見せております。
但し、5大総合商社に関しては米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏がそれぞれ約10%以上の株式を保有したことで注目を受けており、その影響で株価が上昇しています。そのため目先の配当利回りはあまり良くないです。
配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:7,393円
配当額:200円
利回り:2.71%
利回りは3%を切っています。配当額は下限なので増配の可能性もありますが、それでも株価が大幅に下がらない限り、利回りは3%台に留まると考えます。
〇配当方針
2023年度までは累進配当を掲げていましたが、2024年度は配当下限200円か配当性向30%のどちらか高い方としています。ただこれは2024年度期初予算公表時に明かされたもので、2025年度以降はまた別の配当方針が制定される可能性が高く、その場合も他の4総合商社に倣って累進配当を前提としたものになると考えます。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



2022年3月期から利益も配当も一段と数字を上げました。2015年3月期のみ配当金額が横ばいですが、そのほかの年は毎年増配しています。10年連続増配が見えてきています。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:11兆6,933億円
自己資本比率:37.5%
時価総額は10兆越えと、好調な株価を反映しています。自己資本比率は悪くはないですが高くもないです。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
御覧の通り右肩上がりです。業績好調に加えてバフェット効果によるものと思われます。バフェット氏が総合商社株を手放さない限り、株高水準は続きそうです。また株価が同じく7,000円台を上回る同業の三井物産や三菱商事が株式分割を行ったことから、伊藤忠商事も同じく株式分割を行う可能性があるかもしれません。
〇総括
伊藤忠商事は近江商人伊藤忠兵衛が創業した繊維商社で、丸紅株式会社と発祥を同根とする総合商社です。5大総合商社の中では非資源分野に強みを持っており、毎年安定して利益を上げています。2023年度の純利益は資源が好調だった2022年度の水準と変わらず約8,000億円、2024年度の純利益は8,800億円を予定しております。資源価格に左右されにくく、規模が大きいことが、他の4商社と比較した伊藤忠商事の特徴と言えます。
配当・利益ともに毎年安定しており、10年以上減配がありません。また割と増配を行う企業でもあり、2024年度の配当が会社の公表通り200円以上とすれば、10年連続増配となります。他の総合商社と同じく累進配当制を敷いており、利益も安定しているため減配の心配はあまり無いものと思われます。
その一方で株価が高い水準にあるため、現状では4%の利回りすら期待しにくいです。増配傾向にある企業ではあるので長期保有をすれば安定高配当株と同じくらいの累計配当金が得られるかもしれませんが、現状の株価では高配当狙いとしては保有しにくい銘柄です。


