〇3行で銘柄解説
・旧鈴木商店の流れをくむ総合商社7位企業
・累進配当採用かつDOE4.5%設定で安定配当を公約
・株価は下落中にて総合商社にしては高利回りの4%中盤
〇会社概要と配当基準日
双日は7大総合商社と呼ばれる内、7位にあたる総合商社です。規模としては5大総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)に遠く及びませんが、ボーイング代理店航空機取扱実績国内シェア1位や総合商社唯一の炭鉱操業、東南アジア市場に対する強みなど、他社と差別化ができている企業です。
同社は岩井産業、日商、ニチメンの3社が合併した企業で、中でも日商の前身である鈴木商店は金子直吉の番頭経営で知られ、教科書にも載るような名門商社でした。鈴木商店は台湾の樟脳販売で財を成し、多くの子会社を作りました。現在の神戸製鋼所、帝人、IHI、日本製粉、サッポロビールなどは鈴木商店が作った会社です。同社は第一次大戦で鉄鋼の取扱を行い大きく稼ぎ、1917年には三井物産、三菱商事を抜いて年商国内1位の総合商社となり、その売上高は当時のGNPの1割にも及びました。「スエズ運河を渡る船の1割は鈴木の船だ」と言われたほどの勢いがありましたが、昭和金融恐慌のあおりをモロに受け倒産します。しかしその後鈴木商店社員の高畑誠一らが集まり日商を設立(金子直吉は日商に参加せず太陽曹達を設立し、再起を図った)、以降1968年に岩井産業と合併して日商岩井に、2004年にニチメンと合併して現在の双日になりました。
配当金は過去に減配を行ってはいますが、現在は累進配当を採用しており安定しています。また2024年8月頭の株価暴落により、利回りが一時5%中盤まで上昇しました。現在はやや落ち着きを見せていますが、それでも4%後半と、総合商社の中では高い数値となっています。
尚、鈴木商店についてはかつての鈴木商店系企業が協力してネット上に「鈴木商店記念館」を作っております。また城山三郎氏の「鈴木商店焼討ち事件 鼠」も有名です。よろしければ日本の経済史に名を残した名門企業の雄姿をご覧ください。
[鈴木商店記念館]
https://www.suzukishoten-museum.com
![]() ![]() ![]() | 価格:825円 |



配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:3,130円
配当額:150円
利回り:4.79%
2024年8月の株価暴落により、利回りが通常3%台のところ4%台後半となっております。
〇配当方針
累進配当の採用かつDOE4.5%の配当方針としています。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



2021年に減配をしていますが、それ以外は利益が安定していることもあって割と安定して配当しています。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:7,042億円
自己資本比率:32.0%
総合商社6位の豊田通商の時価総額が2兆円規模であることを考えると大きく劣っていますが、全業種で見ると大手企業と言って良い規模でしょう。自己資本比率は低く見えますが、他の総合商社と比較して大きく見劣りするものではありません。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
順調に上昇を続けておりましたが、2024年8月に大きく株価を落としております。ただ双日自体にネガティブなニュース等があったわけではありません。
〇総括
双日は旧鈴木商店や岩井産業、ニチメンを母体とする総合商社で、規模としては5大総合商社と豊田通商に次ぐ7位となっています。ちなみにこの下の総合商社には兼松があります。同社は航空機の取扱や炭鉱操業、北米牛肉輸入などで他社と差別化を図っており、東南アジアや豪州で存在感を発揮しています。今後は米国、豪州やベトナムにも力を入れる計画です。
配当は過去減配を行っていますが、累進配当を導入したことにより減配リスクが低くなっています。10年以上安定した利益を出し続けている実績もあることから、減配となることはまず無いでしょう。安定配当株として保有できる銘柄です。
利回りについては今までは大した魅力はありませんでしたが、2024年8月に日本企業の株価が一斉に大きく下がったことで双日の株価も下がり、現在は4%中盤の利回りと総合商社の中では高めの利回りとなっております。
今後の市場の動きにもよりますが、この記事を書いている時点では安定高配当株としての条件は十分に満たしており、かつ総合商社という、利回りが3%台の企業が多い業界で高利回りとなっている企業であることから、ポートフォリオの業種を分散させる目的でも購入を検討して良い銘柄と判断します。


