〇会社概要と配当基準日
ナガセは大手教育事業会社で、映像授業や国語の林修先生で有名な大手予備校の「東進ハイスクール」の他、「四谷大塚」「早稲田塾」といった受験産業の他、「イトマンスイミングスクール」などを展開している会社です。
創業は1976年になっていますが、母体は1971年に創業者の永瀬昭幸氏が東京大学在学中に開講した「ナガセ進学教室」となります。1985年に「東進ハイスクール」を設立し、2010年には東進主催の「全国統一高校生テスト」を実施します。企業のグループ会社化にも熱心で、「四谷大塚」や「早稲田塾」などはナガセにグループ会社化された企業です。
配当は減配なく安定して出されています。2019年と24年の3月期はやや利益が落ち込みましたが、減配することなくEPS(一株当たり純利益)以上の配当を維持しています。あまり増配をしないのは玉に瑕ですが、10年以上減配なく安定して配当が続けられているところは安定配当株として十分評価できます。
ただナガセの場合、流通株式比率という上場維持に必要な数値で警告を受けたことがあります。その際は創業者保有の株を市場に売り出して事なきを得たのですが、今後も同じように流通株式比率の問題で上場廃止となる可能性を孕んでいるとなると、少し怖い銘柄です。尚、ナガセは2023年4月に株式分割を行っています(1:3)。
配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:1,891円
配当額:100円
利回り:5.28%
株価が落ち込んでいるわけでもないのに5%以上の高い利回りを出しています。ただ配当の傾向として、増配をあまりしないので、そのうち配当額が変わらないまま株価が上昇して利回りが下がる可能性があります。
〇配当方針
業績に応じた利益還元を行うことを基本方針としています。とはいえ業績以上の配当を出したりしていますので、減配しても文句を言われないようにする名目上の方針と思われます。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



株式分割の影響で中途半端な配当金額になっています。配当性向は50%を基本にしている感じですね。ただ2023年3月期は配当性向66%と思い切りました。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:575億円
自己資本比率:32.6%
業界規模が影響しているのか、時価総額は低めです。自己資本比率も高いとは言えませんが、倒産を危惧する水準ではないでしょう。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
瞬間的にドンと上がってドンと下がる、不思議なチャートをしています。コロナ禍でも学校受験は待ってくれないので、あまり影響を受けなかったようです。
〇総括
ナガセは大手予備校の「東進ハイスクール」を中心とする教育事業の会社です。「東進ハイスクール」の他にも「四谷大塚」などブランドのある事業を持っており、かつ顧客を高校生に絞らずに分散させています。
「東進ハイスクール」は模試の実施に加え、実力のある講師をスカウトし続ける運営をしていることもあり、予備校では今後も存在感を示していくことが予想されます。日本は少子化の傾向にありますが、大学進学率は年々上昇しており、現在では50%を超えております。そして難関大志願者の数は大きく減っていないことから受験生の難関大志願傾向は根強く、よって予備校の需要も大きく減ることはないと思われます。
過信は禁物ですが、一定の事業の安定性が見込めるものと思われます。
配当方針は「安定的」や「累進配当」などの文字はありませんが、配当実績では業績問わず10年以上減配を行っておりません。過去の配当性向を見る限り、そこまで無理をして配当を出している様子もないので、今後も安定して配当を出し続けてくれる企業だと思われます。利回りも5%以上と高く、じわじわ株価が上昇するような様子もないため、5%以上の利回りが狙えるタイミングで保有しておきたい銘柄です。
あとはこの会社については上場基準を満たす流通株式比率を満たし続けることができるか。問題が発生した後対策を講じ、現在ではクリアしているので問題はないと思いますが、何らかのきっかけで流通株式比率の基準を下回り上場廃止とならないか、少し気になるところです。


