〇会社概要と配当基準日
商船三井は三井グループの大手海運会社で、日本郵船・川崎汽船と共に3大海運会社に数えられています。規模としては日本郵船に次いで2番手です。愛称はMOLです。
起源は1878年の鉄製蒸気船による海上輸送で、1884年には母体の一つである大阪商船が設立されます。もう一方の三井系海運会社は、1942年に三井物産船舶部を分社化し、三井船舶として設立されます。この2社は1964年に合併し、大阪商船三井船舶となり、1999年には更に他社を合併して商船三井となります。
海運会社はコロナ禍によるコンテナ船業績の爆発的上昇により、莫大な利益を上げました。コロナ禍が落ち着いた現在、各社は今後も安定した利益を上げるために三者三様の方針を打ち出しました。商船三井は市況に左右されやすい海運分野だけでなく、市況に左右されにくい、ダイビルを中心とした不動産業や洋上風力発電などの非海運分野に力を入れる方針を立てました。
配当は下限150円と定めています。2022年と23年の3月期の配当がコンテナ船事業好調の影響で非常に高い金額になっていますが、あくまで一過性のもので実際の配当金は150円をベースに考えた方が良いと思われます。現状の利回りは高めですが、海運業は市況に左右されやすい業界なので、業績が安定しません。150円の配当は出ると思われますが、それ以上の配当が出るかは賭けになりますので、現在の利回りに惑わされないことが大事です。
配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:4,764円
配当額:220円
利回り:4.61%
直近の配当では高い利回りを記録しています。ただ配当額を150円にした場合、利回りは3.14%まで下がります。2024年度の期初時点予想配当金額は180円で、利回りは3.77%です。
〇配当方針
配当性向30%、下限配当150円としています。
また同社は株主優待制度を実施しております。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



赤字と黒字がさざ波のように繰り返されます。2022年と23年3月期はコロナ禍による好況で一時的に業績が上がったものなので当てになりません。貯めこんだ資金をいかにして今後の事業に生かすか、今後の業績はそれに掛かっています。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:1兆6,887億円
自己資本比率:57.1%
2020年度までは30%に満たなかった自己資本比率がコロナ禍の好況で年々上昇し、2023年度3月には57.1%まで上昇しました。ただ経営方針から考えて、この自己資本は非海運事業を中心に使われるものと思われますので将来的にはある程度下がるものと予想されます。事業拡大のための使用なので、別に悪いことではないです。
〇過去10年間のチャート



SBI証券より引用
2021年から現在まで、途中で株式分割を挟んで5倍に上昇しています。コロナ禍で好調だった業績に加え、最近の株高の影響もあるのでしょう。
〇総括
商船三井は日本の3大海運会社で2位の地位を占める三井系の大手海運会社です。コロナ禍のコンテナ事業で大きく稼いだ後、市況に左右されにくい事業ポートフォリオを組む経営計画を立てております。余談ですが、海運トップの日本郵船よりも株主に対する対応が手厚いという話がたまに株式掲示板に書かれています。
配当方針は配当性向30%かつ下限150円としています。コロナ禍で多くの配当金を出したため一時的に利回りが10%を超えることもありましたが、最近は配当金の引き下げと株価上昇のため、利回りが下がっています(それでも4%近くありますが…)。
商船三井の事業計画の進捗状況と業績次第にはなりますが、海運業は市況の影響を受けやすい業界のため、業績が赤字になることも珍しくなく、配当金も安定しません。商船三井は150円を下限に設定しているためそれ以下の配当金になることは考えにくいですが、それ以上の配当金を望まない方が良いと思います。毎年安定して150円の配当金を出す企業として扱い、それよりも配当金が高ければラッキーくらいに考えておくことをおすすめします。


