※この記事は投資を推奨するものではありません。投資は自己判断でお願いします。
株式市場では数年前から半導体関連の株が人気となっています。週刊ダイヤモンドをはじめ、雑誌や書籍でも半導体に関するジャンルのものが多く取り上げられています。先日の松井証券のYouTubeチャンネルでも半導体株が取り上げられていました。
MatsuiSecuritiesより引用
ではなぜ今ここまで半導体が注目されているのか、どんな関連企業があるのか、今後の動向はどうなのかについて、私なりに(松井証券のYouTubeとも被る箇所がありますが…)考えをまとめてみました。
〇なぜ半導体が注目されているのか
そもそも半導体とは何かという話ですが、まず電気を通すものを「導体」、電気を通さないものを「不導体」もしくは「絶縁体」と呼びます。「半導体」とはこの中間に位置するもので、温度によって電気を通す物質のことを言います。
半導体は「産業の米」と呼ばれることもあり、スマホや家電など、我々が普段使っている電子機器をはじめ多くの商品に使用されています。
そして現在求められているのは、回路幅を5ナノメートルや2~3ナノメートルまで微細化した最先端の半導体です。半導体が現在注目されているのは、「Chat GPT」をはじめとしたAI部門に使われるものや、EV、5G、データセンター用、兵器用などに需要があるからです。
特にAIに関してはここ最近関心の向けられている分野であり、その影響を受けてAIを支える半導体が注目されているのです。
ただし、最先端の半導体を作れる企業はほとんどなく、ほぼ台湾のTSMCという会社のみと言って良いくらいです。
西側諸国側の立場にある台湾は中国から軍事侵攻を受けるかもしれない歴史と地理的条件を有していることもあり、もし台湾が中国に攻められたら米国をはじめとする西側諸国はTSMCから最先端半導体の供給を受けることができなくなります。そうなると産業・軍事の分野で打撃を受けるので、今TSMCは日本の熊本県などに工場を作ったり、また日本政府は「ラピダス」という国策半導体企業を作って最先端半導体を自前生産できるようにしているのです。
話が若干逸れましたが、半導体が注目されている理由はAIやEVなどの分野が発展し、最先端の半導体の需要が高まったからです。
〇半導体にはどんな関連企業があるのか
半導体の関連企業は主に3つに分かれます。
半導体製造企業
最先端半導体の分野で有名な企業は、先程挙げた台湾の「TSMC」や、GPU(画像処理半導体)の設計に圧倒的な強みを持つ米国の「エヌビディア(NVIDIA)」、CPU(中央演算処理装置)の覇者とも呼ばれる米国の「インテル(Intel)」が存在します。最近では特に「エヌビディア」が生成AIサーバー向けの半導体の需要が多いため、株価が急激に上昇していました。またその他企業では韓国の「サムスン電子」や英国の「アーム(ARM)」、台湾の「UMC」、米国の「マイクロン・テクノロジー」も有力企業です。
日本勢では半導体設計の「ソシオネクスト」が最近注目を集めています。その他最先端ではありませんが、「ルネサスエレクトロニクス」「三菱電機」「富士電機」「ソニー」、上場していませんが「キオクシア(旧東芝メモリー)」があります。
半導体素材企業
半導体を作るには多くの工程があり、それぞれに材料が必要になるわけですがそれを取り扱っている企業です。
まず半導体を作る土台となるシリコンウェハーを供給する企業として、「信越化学工業」「SUMCO」が挙げられます。この2社で世界シェアの半分以上を占めています。
またシリコンウェハーに回路パターンを描くために使うフォトレジストの分野では、「東京応化工業」「富士フィルムHD」「住友化学」「信越化学工業」、上場廃止となりましたが「JSR」が存在し、この5社で市場シェアの9割を占めると言われています。
その他材料分野の企業としては、パッケージ基盤の「イビデン」「新光電気工業」「味の素」、マスクブランクスの「HOYA」「AGC」、感光剤の「東洋合成工業」、CMPスラリー原料の「扶桑化学工業」などが存在します。
半導体製造装置企業
文字通り半導体を作るための機械を作っている企業です。主な企業としては世界4位の売上規模を誇る「東京エレクトロン」をはじめ、ウェハー洗浄装置で世界シェア首位級の「SCREEN HD」、ウェハーの切断・研磨装置で世界首位の「ディスコ」、検査装置世界シェア首位級の「アドバンテスト」、その他先端半導体の製造に必要なEUV露光対応フォトマスク検査装置で世界シェア100%を誇り、ここ最近の日本の株式市場では1日の売買代金トップの常連でもある「レーザーテック」、「東京精密」「KOKUSAI ELECTRIC」「野村マイクロ・サイエンス」「ローツェ」「ニコン」「キヤノン」などがあります。
ここまで半導体素材メーカーと半導体製造装置メーカーでは日本の企業のみを取り上げました。これはほとんどが東証上場企業で株式の取引が容易だからというのもありますが、そもそもこの2分野では日本勢が強く、世界シェアトップクラスを誇る企業が多いのです。1990年頃、まだ今の様な微細な半導体が必要とされていなかった頃は、日本は半導体の世界売上ランキングトップ10の内、6社がランクインをしていました。その名残とも言えるでしょう。
〇今後の動向はどうなのか
日本は世界情勢を受けて最先端半導体を自国で生産するため「ラピダス」という国策企業を立ち上げました。その他熊本へのTSMC誘致をはじめ、半導体企業の国内誘致に力を入れています。「国策に売りなし」という相場格言の通り、日本の半導体関連銘柄の株価も上昇傾向にあります。
また抽象的な話で申し訳ありませんが、2024年2月にエヌビディアの年次決算と2024年度見通しが発表されました。私はその時半導体設計のソシオネクスト株を保有していましたが、エヌビディアの決算発表前に売りました。というのも、エヌビディアの決算発表は世界の半導体市場の今後を示すようなもので、相場に大きな影響を与えるほどのイベントとなっていたからです。またその時のエヌビディアの決算・見通しのコンセンサス予想は非常に高く、私にはエヌビディアの業績が予想を上回るとはとても思えなかったからです。
しかし蓋を開けてみれば、エヌビディアの決算発表は事前の、私が高すぎると思ったコンセンサス予想を上回ってきました。この発表を受けて翌日の半導体関連銘柄は上昇し、おかげで私はソシオネクスト株で得られるはずだった儲けを逃してしまいました。
しかしエヌビディアの決算を受けて、このような力強さがまだあるからこそ半導体業界は暫く成長を続けるだろうと私は予測しています。
その他の半導体に関する状況を見ても、米国の「メタ(Meta)」や「マイクロソフト(Microsoft)」がAIに関する設備投資を増やす発表をしていることから、AIブームに乗った半導体ブームも暫く続くものと思われます。
過去2000年のドットコムバブルの時は、バブル崩壊の前に企業の設備投資がピタッと止みました。現在のAI市況はバブルではないかという意見もありますが、こと設備投資の面からみると、バブルだとしてもまだ弾けるまでには時間がありそうです。またエヌビディアや日本の半導体銘柄の株価は4月に一度下落しました。株価が一本調子に上がっていくのではなく、一度調整が入っているところを見ても、今が異常な状況とは私には思えません。
また直近の日経新聞の記事も私にとっては心強いものとなりました。



日経新聞2024年4月16日朝刊より引用
余談ながら、AIブームに乗じて最近は原子力発電の燃料の需要も高まっているそうです。



日経新聞2024年4月28日朝刊より引用
AIを動かすためには膨大な電力が必要になるため、原子力発電用の燃料が必要ということらしいです。ホリエモンだったか誰だったか忘れましたが、AIブームによって電力需要が高まるという話をしていた方がいたので、この記事を見た時に自分はまだまだだなと思いました。目先の業界だけでなく、そこから派生した業界のことにも気を配れるようにしなければなりませんね。
さてその原子力燃料ですが、日本の上場企業では取り扱っている企業がパッと見た感じ無さそうです…。「三菱重工業」の子会社である「三菱原子燃料」や、「日立製作所」が出資している「グローバル・ニュークリア・フュエル」、非上場企業の「原子燃料工業」くらいしか見当たりませんでした。あとは総合商社くらいでしょうか。
これが海外株になると、米国の「カメコ(CCJ)」やフランスの「オラノ」といった企業が出てきます。
ただ電力需要ということで言えば、火力発電用の石油やLNGも投資対象になるはずなので、「INPEX」「石油資源開発」「三井物産」「伊藤忠エネクス」辺りは恩恵に与れるかもしれません。私はINPEX株を保有しましたので上がってくれるといいなと思います(小並感)。