証券会社やネットで新NISA(以下NISA)と並んで紹介されるのがiDeCoというものですが、今回はそのiDeCoについて基本的な内容をご紹介していきます。
では早速…
Q1.iDeCoって何なのさ?
→A1.個人型確定拠出年金のことさ。
そう、NISAが投資運用に関する制度なのに対して、iDeCoは「年金」制度なのです。
NISAと並んで紹介されるのは「政府が設定した制度であること」と、iDeCoの特徴の一つである「運用益非課税であること」、「投資信託等で自分で運用すること」がNISAと共通しているからだと思われます。
Q2.確定拠出年金って何?
→A2.一定額を毎月拠出して、その資金を運用する年金制度のこと。
確定拠出年金と対になる年金制度は確定給付年金です。少し説明を加えます。
「確定給付年金」とは、企業年金の一種で社員が企業に勤めている間に企業が運用を行い、退職時に企業制度によって決められた一定の金額を支給する制度です。「確定」した金額を「給付」する「年金」だから、「確定給付年金です」。昔の企業は基本的にこちらを採用していました。
一方「確定拠出年金」は、企業が一定の金額を社員に運用資金として支給して、社員が運用する企業年金のことです。そのため確定給付年金と違い、貰える金額は決められていません。運用状況次第で大きくもなれば、最悪0になることもあります。(0にするのは増やすより難しいと思いますが…)。「確定」した金額を「拠出」する「年金」だから「確定給付年金」です。「DC:Defined Contribution Plan」と訳されることもあります。
そしてこの確定拠出年金、元々は企業向けの制度だったのですが、2017年から個人や公務員も利用できるようになりました。そのため個人型確定拠出年金と言われ、その愛称が「iDeCo」となったのです。この「iDeCo」という愛称は公募で決まりました。
尚、職業や会社の年金制度によって毎月拠出できる限度額が変わってきます。またiDeCoに加入できない場合もあります(国民年金を払ってない人や65歳以上の人など)。
Q3.iDeCoをやるメリットとデメリットって何?
→A3.下記参照
〇iDeCoのメリット
掛金が全額所得控除になる
「何言ってんだ?」と思われるかもしれないので言い換えますと、iDeCoのために拠出した金額は税額計算時に除外される、つまり給与全体にかかる税金が拠出額分安くなるということです。
所得とは税務用語で、収入からあれ足したりこれ引いたりした後の収入金額のことで、この所得に対して税率を掛けた金額が納税額になるのです。
iDeCoで言うと例えば、会社が確定給付年金を採用している会社員のiDeCo掛金(拠出額)の上限は12,000円/月、つまり144,000円/年となります。所得に掛かる所得税率を20%とすると、年間で28,800円(144,000円×20%)だけ所得税が安くなります。
また住民税も所得に対して掛かる税金ですので、iDeCoで所得を減らした分、住民税も安くなります。
金融商品の運用利益が非課税になる
例えば投資信託の運用益を再投資する場合、運用益から税金が引かれた後の金額が再投資されます。これはNISAを利用した場合も同じです。しかしiDeCoの場合は運用益に掛かる税金が非課税の状態で再投資されるため、複利効果が高まり、利益の上昇額もその分増える可能性があります。
投資信託の運用手数料が安い
iDeCoで運用できる商品は一般のものと違い、iDeCo専用の金融商品となります。投資信託の場合、一般に売られている商品よりも運用手数料が安く設定されています。
例えば日経225に連動する商品の場合、投資信託運用手数料は
ニッセイ日経225インデックスファンド(NISA等一般) 0.275%
DCニッセイ日経225インデックスファンドA(iDeCo) 0.154%
となります。
投資信託以外での運用も可能
投資信託の他、年金保険や定期預金での運用も可能です。
〇iDeCoのデメリット
60歳まで原則資産の引落不可
iDeCoは年金なので、60歳まで基本的に引落できません。なので運用途中で「子供の教育資金が必要だから」などの理由で解約することはできないのです。
ただ資金の拠出を止めたり、拠出金額を変えたり、運用する商品を途中で変更することは可能です。
運用状況により資産が目減りする
iDeCoに限らず確定拠出年金やNISAの運用もそうですが、元本保証の商品を選ばない限り、資産は増えたり減ったりします。元本保証の商品の場合は大して資産が増えないことが多いです。金融の世界にノーリスク・ハイリターンはありません。
投資信託の選択肢が少ない
NISA等口座で選択できる投資信託が1,700本等4桁あるのに対し、iDeCoでは商品を選抜しているため、せいぜい2桁台の投資信託からしか選べません。
iDeCo受取時に税金が掛かる場合がある
「メリットのところで非課税と書いていたではないか!話が違う!」と怒らんでください。iDeCoで非課税になるのはあくまで運用商品の運用益に対してで、実は資産を受け取るときには通常の年金と同じ税制が適用されます。iDeCoはあくまで年金ですので…。
60歳を超えて資産の受取ができるようになり、iDeCo資産を受け取る時には所得税が適用されます。
そして税制上、iDeCo資産を一時金として受け取る場合には退職所得として退職所得控除が、年金として受け取る場合は雑所得として公的年金控除が適用されます。
つまり、iDeCoの資産全額に所得税が掛かるわけではないということです。上手くいけば税金を払う必要すらありません。まあその場合は運用が上手くいかずに資産が十分に増えなかった場合になるわけですが。
Q4.結局NISAとiDeCo、どっちをやったらいいの?
→A4.どっちもやったらいいんじゃないの?



そうでした。我ら日本国民は貧乏なのでした。
ただ別に冗談でも嫌味でもなく、NISAもiDeCoも一応お得な制度なのだから、余裕があるなら両方やって問題ないと思います、
各々のメリットを上げるとすれば、
〇NISA特有のメリット
・いつでも資産の引落ができる
→必要な時にお金を使える(=流動性が高い)
・引き落とした資産は完全非課税
→iDeCoみたく、税制による控除の額で課税されるか否かが決まらない
・運用商品の幅が広い
→個別株はiDeCoではできません。
〇iDeCo特有のメリット
・節税効果がある
→掛金は収入から引かれて税金計算されるから、支払う税金が毎月減る
・運用益には税金が掛からない
→複利効果が強く働くため、資産が増えやすい
・投資信託の運用手数料がNISAより安い
→手数料が安ければ運用資金も減りにくい
・60歳まで資産の引落不可
→無駄遣いができないので強制的に年金を積み立てられる
以上の各メリットを踏まえて、NISAかiDeCoのどちらか片方のみを選択しなければならないのならば、私ならNISAを優先します。
理由は上記NISAのメリットに加え、投資信託の運用手数料はNISA商品でも十分に安い水準にあり、大した差別化にならないと判断したからです。
またiDeCoに関しては資産運用が上手くいけばいくほど資産が増えるので、60歳で引き落とすときに控除対象額以上の資産ができている可能性があり、控除額以上の資産は結局課税されるので旨味が少ないと考えました。
とはいえこれは私の判断で、人によってはiDeCoの方がNISAより優れていると考える人もいるので色々な情報を得ながら自分なりの判断をしてください。
最後に、主要なネット証券会社はiDeCoの取り扱いもしています。大手ネット証券各社については別のページで紹介しているので、よろしければそちらもご参照の上、どの会社でiDeCo口座を開くのかを決めていただければと思います。


