株主優待の良し悪し 優待銘柄が必ずしも良くない理由

個別株の中には株主優待を実施している企業もあります。これは有名なことなので割とみなさんご存じでしょう。ちなみに株主優待は日本独自の制度で、米国株をはじめ海外にはありません。

…といいたいところですが、実際にはごく少数ながら海外にも株主優待に該当する制度を導入している銘柄もあるそうです。

株主優待銘柄って、タダで優待品が貰えるのだからお得に思えますが、他方書籍を読んでいると、株主優待銘柄に否定的な意見も多々見受けられます。

今回は株主優待制度について、良い点悪い点の双方から、具体的銘柄も交えながら個人的意見をのべていきたいと思います。

※2024年1月15日現在、日本株絶好調につき全体的に利回りが下がっています。これでは株主優待のメリット⑤とデメリット①が機能しなくなりますので、当記事での株価は基本的に2022年秋号の会社四季報のものを使用させていただきます。2023年~2024年にかけて日米とも株価絶好調故、ご容赦ください。


目次

<株主優待の良い点>

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貰うと嬉しい


 「我、株主ぞ!」。労働者の立場だと働かされるだけだった企業から、資本家になった瞬間、三つ指ついて「お納めください」なんて優待されたらそれだけで偉くなった気分。あと単に贈り物をもらって嬉しいです。

家族とのコミュニケーションの機会が得られる。


 株主優待の中には商品カタログが送られてくるものや、複数の優待品から選べるものがあります。


 私はビールの「キリンHD」の株を持っていますが、同社は株主優待として、ビールのセットを含む複数の選択肢を用意してくれています。それを両親に見せることで、「今年は何を貰う?」なんて会話の種になっています。


 例えば年頃の娘さんをお持ちのお父さんの場合、「日本マクドナルドHD」の株主優待で商品のタダ券を貰い、娘さんに「これ、使わないからあげるよ。友達と行ってきな。」とか言って渡せば、娘さんと会話するきっかけになる訳です。

 なお、間違えて吉野家のタダ券でも渡そうものなら父の威厳は地に落ちることが予想されますのでご注意ください。吉野家で若い女性って見たことない。

企業によっては株主様限定品が貰える


 一部の企業は株主様向けに、一般には販売していない限定品を優待として配布しています。


 具体的には「アサヒグループHD」は株主限定プレミアムビールを優待品として配っています。


 また「タカラトミー」は非売品のトミカやリカちゃん人形をくれます。
  

 「信金中央金庫」もオリジナルグッズをくれるようです。


 こうしたものは株主にならないと手に入らないものなので、株主優待を得る大きな動機になると思います。誰だ、ヤフオクで買えばいいとか言ったやつ?

※「信金中央金庫」は他社が100株で1単元なのに対し、1株で1単元です。


税金対策になる


 ここから生々しい話に入ります。配当金には税金が掛かりますが、株主優待には税金は掛かりません。


 なので例えば「稲畑産業」など、QUOカード500円分を優待としてくれる会社がある場合、QUOカードには税金がかからないのでそのまま500円の価値のあるものになります。


 一方配当金で500円を受け取った場合、税金が掛かって400円以下しか貰えません。この点で、株主優待の方が得をするケースがあるのです。


利回りが破格になる株がある


 株主優待銘柄の利回りを計算する場合、「配当金+優待品の価格」で計算します。そうすると、たまに10%を超えるような利回りを叩き出す銘柄が出てきます。


 具体的には「SBI HD」。株価2,729円に対し、配当金150円。これだけで利回り5.5%の高配当株ですが、株主優待として14,520円相当のサプリメント等自社商品もしくは2,000円相当の暗号通貨をくれます。
前者の場合、配当金と合わせて利回り10.8%、後者の場合、利回り6.2%となります。後者はともかく前者は結構破格です。


 あるいは「NTT(日本電信電話)」。株価約186円(2024年1月15日現在)ですが、5年以上継続保有で4,500円分のdポイントをくれます。配当金が5円なので、利回りは26.8%です。


 また「クラレ」の場合、1株持っているだけで株主優待をくれます。1株1,066円で、オリジナルカレンダーが届きます。カレンダーの金額を1,000円とすれば、利回りは100%近くになります。2年目以降もくれるのでぼろ儲けです。


<株主優待の悪い点>

基本的に利回りが悪い


 良い点の⑤と矛盾するようですが、実際に破格の利回りを実現しているところなんてほんの一握りで、大体の株主優待銘柄は利回りが悪く、高配当株を持っていた方が得なんてのがザラです。


 例えば優待券では有名な「日本マクドナルドHD」。株価4,970円で配当金は39円、株主優待はお食事券6枚で高いやつを頼んで1枚約800円、6枚で4,800円です。これを利回り換算すると、1.7%。


 あるいは「キッコーマン」。株価8,580円で配当金61円、株主優待は1,000円相当の自社商品詰め合わせなので、利回り換算で0.82%となります。


 私の持っている「キリンHD」も、株価2,250円で配当金65円。株主優待は1,000円相当の自社商品。利回り換算で3.3%です。

 最初にお断りした通り、ここで出している株価は2024年1月時点のように値上がりする前の数値です。
 記事で使用している株価の時点では「JT」利回り6.35%、「長谷工コーポレーション」5.04%、「三井住友FG」5.25%と、5%以上の高利回り株が多く存在しています。税金があるとはいえ株主優待銘柄よりも、多くの現金が貰える銘柄が多いのです。


何が貰えるか分からない場合がある


 これは福袋的な意味ではメリットになりうるのか…。いらないものを株主優待で貰ってもどうするよって話です。


 例えば「IBJ」。結婚相談所等を経営している企業で、優待は結婚相談所入会料割引券と自社運営マッチングアプリ年会費半額券(当時)でした。婚活していない人にはちっとも嬉しくない優待ですね。
 私は婚活中なので、半額券をヤフオクで100円で買いました。


 ここまで極端でないにしても、自社商品詰め合わせの中にはいらないものもあるでしょう。処分に困ります。


 ただヤフオクで売れるということを考えるとメリットなのかも?


使いどころが限られている株主優待が多い

 自社製品を送ってくれる株主優待はいいのですが、自社サービスを提供してくれる株主優待は、店舗数が少ないことや店舗が近くにないことで、使い勝手が悪く、結局使わない…なんてことも多々あります。

 例えば「東京テアトル」。映画のタダ券をくれるのですが、それが利用できる映画館が都内に5件しかありません。


 あるいは「東日本旅客鉄道(JR東日本)」。乗車割引券は使い道があって大変助かりますが、その他の優待券は個人的に中々使いどころがありませんでした。


 「NEW ART HD」も、軽井沢の美術館無料券はちょっと使う機会に乏しいでしょう。但し、ここの優待の一つであるジュエリーショップでの買い物割引については、店舗数が多いため使いやすいかと思います。
私もここの株を将来に備えて持っています。婚約指輪を優待で値切る次第。

 優待自体は魅力的に見えても、本当に自分が使えるのかをよく確認してから株式を購入することをお勧めします。


④優待廃止になる可能性がある


 株主優待は海外に居る投資家は貰えません。日本株には海外投資家も多く投資をしているので、これは不公平だという意見が出ており、株主優待を廃止して、その分配当金を増やすといった施策を取る会社が増えてきています。「JT」「オリックス」「三菱UFJ FG」なんかがそうです。

「オリックス」なんて、優待が良かったので保有していた人も多かったようで、優待廃止の発表時にはYahoo!の話題ワードに出てきたほどです。

また「ラストワンマイル」という会社が2023年から1株(3,500円程度)でAmazonギフト券1,000円分という株主優待をしていましたが、わずか1年後の2024年に「株主優待で知名度が十分に上がったから」という理由で廃止になりました。Twitter(現X)では「ふざけるな!」の声も多々ありました。私もその一人です。


 配当金も業績によっては無くなる可能性がありますが、株主優待が個々の企業が行っているサービスの意味合いが強いのに対し、配当金は株主の権利の側面が強いことから、「今後配当金を一切出しません」なんてのはまず起こりえません。 株主優待には心理的なメリットも多々ありますが、「お得か?」と問われると必ずしもそうは言えないところがあります。心の満足や家族とのコミュニケーションはお金には代えられないものだと思いますので、株主優待を否定する気はありません。心の満足を取るか、実利を取るか、選択肢はありますから選択することも個別株の楽しみだと思ってください。












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