〇会社概要と配当基準日
武田薬品工業は医薬品業界の属する、新薬メーカー国内1位の企業です。その売上高や研究開発費は2位以下に大きく差をつけており、国内医薬品メーカーでは別格の存在です。2019年にはアイルランドの製薬会社「シャイアー」を高額で買収し、世界売上Top10に入るメガファーマーとなりました。海外比率は87%で、売上の多くを海外で稼いでいます。
元々は社名の武田家の同族経営の会社でしたが、今では社長含め役員の3分の2が外国人です。
配当基準日:3月末
〇直近株価と配当額と利回り
株価:4,362円
配当額:188円
利回り:4.31%
武田薬品工業は直近では毎年大体利回り4%台で安定しています。配当金は毎年律儀に180円を堅持していましたが、2024年の配当金は15年ぶりの増配となる、8円増額の188円の予定となりました。
〇配当方針
累進配当性を導入しています。そのため方針の上では減配の可能性が低い銘柄です。
〇過去10年配当とEPS(一株当たり純利益)



ものの見事に毎年180円の配当を続けています。ただEPSと比較すると、10年のうち7年はEPSの方が配当金を上回っており、当年の利益からではなく繰越利益から配当を支払っている様子がうかがえます。EPSが配当金を上回る年でも、決して「大きく」上回っているとは言えないところが少々気にかかります。
〇時価総額と自己資本比率
時価総額:6兆6,555億円
自己資本比率:47.5%
国内医薬品メーカーではぶっちぎりの大手であるにも関わらず、実は時価総額は競合の「中外製薬」や「第一三共」の方が上です。自己資本比率が意外と高いですね。配当金の原資はこれですか。
〇過去10年間のチャート



※SBI証券より引用
2018年に株価を大きく下げています。この時期はちょうどアイルランドの大手製薬会社「シャイアー」の買収に乗り出した頃で、7兆円近くの巨額買収で負債が膨らむことや、買収後の成果が不透明であったことが原因と思われます。
〇総括
武田薬品工業は医薬品業界での存在感は圧倒的で世界にも通用するほどです。配当金も180円を続けており、累進配当を謳っていることから高配当株狙いの投資家にとっては魅力的に映ります。株価も2018年に大きく下げたおかげで4%以上の利回りを期待できます。
その一方、EPSの大きさに対して配当金の額が大きすぎることが大きな懸念点になっています。自己資本比率が50%近いのは安心材料の一つですが、いつまでもEPS以上の配当を続けているといつかは減配や無配の可能性が高まってきます。
また武田薬品工業が世界に名だたるメガファーマーの一員になったきっかけである「シャイアー」の買収ですが、買収から5年経った今、あまり良い評価は受けていないようです。それは買収前と買収後の年間増収率が大して変わらないからだと言われています。買収によるシナジー効果が期待できなかったことも、株価が6年前から戻らない原因となっているのでしょう。
高配当株投資としては難しい所で、確かに利回りは魅力的ではありますが、今後10年20年後に同じ配当金を出すには経営改革が必要になると思われます。そうなると、本ブログで上げています「安定配当株」とは言い難いというのが私の見解です。


